超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第1話 超合理的高校生「田所正光」誕生】
ーーーまもなく、本ビルの消灯時間となります。作業中の方は速やかにご退出をお願いいたします。ーーー
「……もうこんな時間か…」
都会のビルの高層階。
モニターから放たれるブルーライトと換気扇の音だけが響くフロアの一角で、
一人の男がため息交じりにそうつぶやいた。大手企業のシステムエンジニアとして働く彼を人呼んでこう呼ぶ。ーーー社会の歯車と。
「今月も残業3桁はいってるんだろうなぁ…今月で5か月連続か…あのくそ野郎のせいて、どんでもない案件ほいほいと引き受けやがって、俺だったら断るわこんなん。」
リュックサックに社用PCを詰め込みながら、ぶつぶつと呟くようになってもう1年以上経つ。
そして帰宅は深夜0時を少し過ぎたころ、いつものコンビニで買ったいつもの総菜パン3個と週末は缶ビールとホットスナックの焼き鳥を1本食べて寝る。
なぜ、この組み合わせなのか。
それは、平日は総菜パンのみで税込500円きっかり、週末はそれに缶ビールを合わせると税込700円きっかりと計算がしやすいからだ。正直、1円単位での細かな計算は、はっきり言って時間の無駄。
最近入ってきた、新人の子にもこんなことを言われた。
「え、先輩、毎日同じの食べてるんですか? 新作のラーメンとか食べないんですか?あれ、有名店監修のもと作ってるんで、絶対驚きますよ。」
いや、正直美味しさよりも時間が惜しいから、レジで店員にもたつかれるのもいやだからこの生活を続けている。
そんなある朝、右目の目蓋がけいれんしだした。ネットで調べてみるとどうやらストレスによる影響らしい。
睡眠は少ないながらも最低でも4時間はしっかり寝ているから問題ないと思っていたが。
とはいえ、ただ気になるだけで作業に影響ないので、俺は作業に戻った。
ーーーまもなく、本ビルの消灯時間となります。作業中の方は速やかにご退出をお願いいたします。ーーー
「…お疲れさまでしたっと」
俺はリュックを背負いフロアを後にし、エレベーターホールに向かった。
『終日点検作業中』
そうだ。今日は高層階用エレベーターは定期点検を実施していたわ。
出社時は階段上るのだるかったっけ…
そんな今朝のことを思いながら、階段を下りた。
「…しっかし、あいつのソースなんなんだ。ネストは深くなるような構造してるし、そのせいで終端の「}」抜けてるし、バグ対応も楽じゃないん…!?」
ボーっと今日の振り返りしてよそ見してしまったからだろうか。
階段を1段踏み外してしまった。
ドカドカドダドカドタ…ドンッ!
打ち所が悪く、息を吸い込むだけで身体の節々に激痛が走る。
「早く…どこかへ…連絡を…」
携帯に手を伸ばそうとするものの身体が思うように動かない…
しかしオフィスに残ってたのは、俺1人。
警備員の見回りはもう1時間後であること。
しばらく助けは来なさそうだ…俺はそのまま目を閉じた。
ーーーかすかな明かりを感じた
「…朝を迎えてしまった…のか?」
うっすらと目を開けると部屋の電気が見えた。
あたりを見渡そうにも、やはり身体が動かせない。
でもかすかに、ここが病室であること、ここに俺が運ばれてきたことはわかる。
そこに看護師がやってきた。
俺の顔を見るなり、すぐに「先生!!」と叫びながら出ていった。
その言葉を聞いて、俺は相当な時間目を覚まさなかったんだと悟った。
にしても、こんな状況下でも、我ながら冷静な思考をするもんだ。
だが、看護師が先生を連れて戻ってきたときに、その冷静さはかき消された。
「先生、田所さんが目を覚ましました。」
!?…
田所…!?
===To Be continuity===