超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第11話 急転直下】
ーーープレゼン本番ーーー
予想通り、お化け屋敷を希望するクラスは俺たち1-4以外にも2クラスあった。それは1-6, 1-7だ。つまり、お化け屋敷のプレゼンは、この3組で1枠を争うことになる。
プレゼンのルールを再度振り返る。
・発表者は発表日の1週間前に企画書を提出すること
→この件は、友坂案を早急にまとめ、期限内での提出は完了。
・発表時間は準備含めて5分
・基本的にプレゼンのスタイルは何でも良い(衣装を用いたり、ホワイトボードを用いたりなど)
→社会人時代に活用したプレゼン用のソフトを準備してきた。
・共通で教室レイアウト用に模造紙1枚配布される
→模造紙は友坂案にある教室内の経路を記載して、プレゼン用のソフトと合わせてプロジェクションマッピングとなるように仕掛けた。
上記の準備により、視覚的にもイメージしやすさがある。また、相手は高校生、ここまで用意できている周到さを評価してもらえることだろう。
さらに友坂からの一言によるダメ押しの構成で挑む。
プレゼン会場は視聴覚室で行われ、発表者は教壇に立ち、審査員となる文化祭委員は向かい側に座り、印刷された企画書とプレゼン内容を確認する。もちろん、山本と西田の姿もそこにある。山本は頼んだぞといった表情でこちらを見る。西田は窓の外をボケーっと見ているだけだった。
「…それでは、1-4からプレゼンお願いします。」
「はい!」
俺は威勢よく返事をし、その後は淡々と説明し、要点に関しては抑揚をつけたりと社会人レベルのプレゼンスキルを見せつけた。
そして、最後に友坂があざとさ全開で
「私たちが一生懸命、考えて作りました。皆さんの清き一票をお願いします!!」
と一言添えた。
「以上、1-4のプレゼンでした。」
司会進行の文化祭委員に案内され、俺らは控室で待機となった。
次のクラスが案内された。おそらく、1-6だろう。控室の隅でこちらの状況を確認しているのが1-7といったところか。
しばらくしていると、委員の方から、
「1年でお化け屋敷に立候補した3クラス、こちらへどうぞ」
と先ほどプレゼンした会場に集められた。
「結果を発表します。」
「1年お化け屋敷を担当するクラスは、他2クラスの辞退により1-4となりました。」
…え、辞退????
俺は状況を飲み込めないまま友坂の方を見る。友坂もまた俺と同じく他2クラスの辞退に動揺を隠せないでいた。
すると端の方からため息交じりに聞こえてきた声には、
「由紀子様出てきてしまったら、もうお手上げなのよね…」
「田所ってやつのプレゼンも異常にうまかったし、勝てないわ」
さすが友坂のパワーといったところか。
それにしても俺の発表が控室まで聞こえていたということか。
俺が控室にいたときには、他のクラスの発表の声は聞こえてこなかった。おそらく、辞退する旨を伝えただけだから、発表するほど声のボリュームを上げなかったということだろう。
と一人で納得していると、横で友坂がさも、「私の力でしょ!」と言わんばかりに俺にどや顔見せつけてくる。
「はいはい、わかったから」
向かい側の文化祭委員側に目をやると山本はホッとした表情を浮かべ、西田は「マジか」とあっけにとられたような表情をしている。それが2人のプレゼンを受けてなのか、この決戦の結末が急転直下に決まったことに対してなのかはわからないが…
「まずはお化け屋敷に決まってよかったわね。私の夢の実現に一歩近づいたってことでこんな喜ばしいことはないわ!」
友坂は感情を爆発させていた。
俺はこの友坂の人心掌握能力をうまく活用したかった。
「なあ友坂、もしよかったらでいいんだが、お化け屋敷を構築するにあたっての現場でのリーダーになってくれないか。」
「え、それってどういう事。発表で田所君は役割を終えたと思ってるの???」
「いや違う、これは役割分担だ。友坂には現場でクラスメイトの指揮を執ってほしい。普段から人を頼ることに慣れている友坂なら得意だと思ったんだ。俺は、俺で資材調達とクラスのシフト調整に尽力しようと思って、あ、もちろん必要であればサポートには入るつもりだから。どうかな。」
「うーん、今までの田所君だったら信用はできなかったけど。今の田所君なら信頼できるからいいよ。現場指揮、執ってあげる!」
「ありがとう!」
俺は友坂に頭を下げた。
「久々に感謝で頭を下げられたわ。最近は告白ばっかりだったからさ。なんか感謝されるとさ、良い気分になるね。」
と友坂は笑いながらそう言った。
文化祭まで、あと数週間後。
俺はすでに動いていた。
===To Be continuity===