超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第12話 疑念】
ーーーある日の放課後ーーー
俺は友坂からノートに記されたコンセプト案を確認したその日に、
学校から一番近いスーパーマーケットにいた。
俺はサービスカウンターへ行き、店員にこうお願いをした。
「西高校1-4の田所と申します。1点お願いがございまして、こちらで廃棄している段ボールを文化祭の準備に用いたいんですけど、そういうものって譲っていただくことは可能でしょうか。」
すると店員は、
「西高校さんですね。毎年、うちにはそういった頼み事は来るので、あるものでしたら持っていいて大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。使用するのはまだ1週間ほど先なので、お取り置きって言っていいんですかね。そういうのもできたりしますか?」
「構いませんよ。いつ頃取りに来ますか?…」
そうして俺は事前に段ボールの確保に成功した。
そうこれは1周目の高校性の時に経験したことだった。
文化祭直前でいざ調達するとなるとどこもかしこも、他クラスに回収済みとなっているか。もしくは、段ボールの収集日が近くにあり、確保できても量が少ないとか。
俺はこの経験があったからこそ、事前に確保できた。
それに、お化け屋敷じゃないにしろ、段ボールの確保は必須だった。
ーーーある日の放課後ーーー
俺は友坂に声をかけた。
「すまん友坂、これをクラスのみんなに配って、来週までに回収してほしいんだ。急な頼みで申し訳ないんだけどお願いしてもいいかな?」
「?…ナニコレ、そして配って回収って、私をパシリとして扱う気!?」
「当日に向けての作業スケジュールのアンケート、こういうの集めるの大変だからさ。人望の厚い友坂が依頼してくれた方が効率よく回収できると思ってお願いしたんだけど、厳しいかな?」
「ま、まあ、人望の厚い!私にかかればこんなの1日で回収できるわ」
友坂は得意げにそう答え、俺が持っていたプリントを持っていった。
「ありがとう!恩に着るよ」
ーーー翌日の放課後ーーー
「おい、正光。」
「お、おお友坂か。てか、名前呼捨て…」
「え?ああ、まあいいでしょ。私が唯一素で話せる相手なんだから。他の子は向こうから遜るから敬語使わざるを得なくなるのよ。大変なのよ。」
「なるほどねぇ…そりゃ大変なこったぁ」
「はい、頼まれてたもの集めてきたわよ。」
友坂はそう言い、プリントを俺の目の前に置いてきた。
「とりあえず、アンケートに書かれてる期間で、サッカー部と野球部、あとチア部は練習が忙しいって回答らしいから書かなかったみたい。それ以外の子のは、全部集めたわ。」
「1週間ほど余裕見積もったつもりだったんだがな…まさか、本当に1日でやってのけるとは…ホントに頼りになるよ。」
「ま、まあね。」
満更でもない表情を浮かべる友坂をよそに俺は、プリントを鞄にしまう。
「てか、正光。あんた瘦せてきてない??」
「?…ああ、そうだね。ちょっと入院中に太ったみたいだったからさ、筋トレとか始めて元に戻したんだよ。」
「いや、元より痩せてるって。」
「え、そうなの!?まあこっちの方が動きやすいし、いいかなって思って。変かな?」
「変ではないけど、あなた記憶なくしてからホントに別人みたいね。まるで、誰かが正光に乗り移ったみたいな変貌って感じ。」
…!?
「まさか…乗り移るなんてね…ただ健康になりたいと思っただけだよ。じゃあ俺はプリントまとめるから、さよなら」
俺はいそいそと教室を後にした。
「…あやしい」
友坂は怪訝そうに帰る俺の姿をずっと見ていた。
女の勘は恐ろしいほどに当たる…
===To Be continuity===
超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第11話 急転直下】
ーーープレゼン本番ーーー
予想通り、お化け屋敷を希望するクラスは俺たち1-4以外にも2クラスあった。それは1-6, 1-7だ。つまり、お化け屋敷のプレゼンは、この3組で1枠を争うことになる。
プレゼンのルールを再度振り返る。
・発表者は発表日の1週間前に企画書を提出すること
→この件は、友坂案を早急にまとめ、期限内での提出は完了。
・発表時間は準備含めて5分
・基本的にプレゼンのスタイルは何でも良い(衣装を用いたり、ホワイトボードを用いたりなど)
→社会人時代に活用したプレゼン用のソフトを準備してきた。
・共通で教室レイアウト用に模造紙1枚配布される
→模造紙は友坂案にある教室内の経路を記載して、プレゼン用のソフトと合わせてプロジェクションマッピングとなるように仕掛けた。
上記の準備により、視覚的にもイメージしやすさがある。また、相手は高校生、ここまで用意できている周到さを評価してもらえることだろう。
さらに友坂からの一言によるダメ押しの構成で挑む。
プレゼン会場は視聴覚室で行われ、発表者は教壇に立ち、審査員となる文化祭委員は向かい側に座り、印刷された企画書とプレゼン内容を確認する。もちろん、山本と西田の姿もそこにある。山本は頼んだぞといった表情でこちらを見る。西田は窓の外をボケーっと見ているだけだった。
「…それでは、1-4からプレゼンお願いします。」
「はい!」
俺は威勢よく返事をし、その後は淡々と説明し、要点に関しては抑揚をつけたりと社会人レベルのプレゼンスキルを見せつけた。
そして、最後に友坂があざとさ全開で
「私たちが一生懸命、考えて作りました。皆さんの清き一票をお願いします!!」
と一言添えた。
「以上、1-4のプレゼンでした。」
司会進行の文化祭委員に案内され、俺らは控室で待機となった。
次のクラスが案内された。おそらく、1-6だろう。控室の隅でこちらの状況を確認しているのが1-7といったところか。
しばらくしていると、委員の方から、
「1年でお化け屋敷に立候補した3クラス、こちらへどうぞ」
と先ほどプレゼンした会場に集められた。
「結果を発表します。」
「1年お化け屋敷を担当するクラスは、他2クラスの辞退により1-4となりました。」
…え、辞退????
俺は状況を飲み込めないまま友坂の方を見る。友坂もまた俺と同じく他2クラスの辞退に動揺を隠せないでいた。
すると端の方からため息交じりに聞こえてきた声には、
「由紀子様出てきてしまったら、もうお手上げなのよね…」
「田所ってやつのプレゼンも異常にうまかったし、勝てないわ」
さすが友坂のパワーといったところか。
それにしても俺の発表が控室まで聞こえていたということか。
俺が控室にいたときには、他のクラスの発表の声は聞こえてこなかった。おそらく、辞退する旨を伝えただけだから、発表するほど声のボリュームを上げなかったということだろう。
と一人で納得していると、横で友坂がさも、「私の力でしょ!」と言わんばかりに俺にどや顔見せつけてくる。
「はいはい、わかったから」
向かい側の文化祭委員側に目をやると山本はホッとした表情を浮かべ、西田は「マジか」とあっけにとられたような表情をしている。それが2人のプレゼンを受けてなのか、この決戦の結末が急転直下に決まったことに対してなのかはわからないが…
「まずはお化け屋敷に決まってよかったわね。私の夢の実現に一歩近づいたってことでこんな喜ばしいことはないわ!」
友坂は感情を爆発させていた。
俺はこの友坂の人心掌握能力をうまく活用したかった。
「なあ友坂、もしよかったらでいいんだが、お化け屋敷を構築するにあたっての現場でのリーダーになってくれないか。」
「え、それってどういう事。発表で田所君は役割を終えたと思ってるの???」
「いや違う、これは役割分担だ。友坂には現場でクラスメイトの指揮を執ってほしい。普段から人を頼ることに慣れている友坂なら得意だと思ったんだ。俺は、俺で資材調達とクラスのシフト調整に尽力しようと思って、あ、もちろん必要であればサポートには入るつもりだから。どうかな。」
「うーん、今までの田所君だったら信用はできなかったけど。今の田所君なら信頼できるからいいよ。現場指揮、執ってあげる!」
「ありがとう!」
俺は友坂に頭を下げた。
「久々に感謝で頭を下げられたわ。最近は告白ばっかりだったからさ。なんか感謝されるとさ、良い気分になるね。」
と友坂は笑いながらそう言った。
文化祭まで、あと数週間後。
俺はすでに動いていた。
===To Be continuity===
超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第10話 友坂という女】
ーーー放課後ーーー
友坂が俺の方に来た。
「ね。言ったでしょ。心配ないって。」
得意げにそう言い放つ。
「でもなんで、あんな説明で良かったんだ?」
俺はついさっきの出来事が不思議でたまらなかった。
「私は『あえて』知らないふりしてるけど、ゆきりんクラブってものがあるらしいわ。だから、私が何か言えば、なんでも思い通りになるってこと。」
「…え?」
俺はまたしても頭を抱えた。ファンクラブ???
「ちなみにファンクラブって、クラス内での話だよね…」
「いや、全学年らしいわ」
「嘘だろ…」
まだ入学して半年も経ってないのに!?
いや確かに、俺が友坂と話してるとき、妙に視線が来るとは思っていたが…
そういえば、いつかファミレスで友坂とコンセプトの話をした時も、同じ制服を着たグループにがん飛ばされてたような…
「なんでそんな人気なんだ。いたって、普通じゃないか。」
「私もよくわからないんだけど、なんか自分に都合がいいから考えないようにしてるわ」
と友坂は笑いながらそう返す。
…!?また視線を感じる。
「田所のやつ、ゆきりんと気安く話しやがって、自分の身の丈わかってんのか。」
「由紀子様、この前田所とファミレス行ってたらしいわよ。親衛隊がそういってたらしいわ。」
「親衛隊は何もしなかったの?」
…聞こえてるっつーの。
でも、確かに友坂の言う通り、友坂への人気なのか、信仰なのかはわからないが、
クラスメートを掌握する力があるということはわかった。
もし、彼女の言う通り、対象範囲が全学年なのであれば、
お化け屋敷のプレゼンも彼女が出た方がよかったのではないか…?
「あのさ、友坂さん。よかったらなんだけど、プレゼン当日も一緒にやらないか?」
「もちろん、そのつもりよ。田所君に任せて、万が一でも落選したら、私のコンセプトが水の泡になっちゃうでしょ!」
「はい、おっしゃる通りです。」
やっぱりこの女、敵に回すのはマズイな。
「あ、でも…」
友坂が曇った表情を浮かべた。
「でも?」
「でも、私の思い通りにしてくれるのは、あくまでも西高の生徒だけなのよね。どうしても、先生とかには効かないみたいなの。」
「まあ、あんな説明で教師陣が納得するなんて、思ってないけどな。」
「はあ?田所君もそっち側なのね。」
「そっち側ってなんだよ。」
「私の思い通りにならない側のことよ。とはいっても生徒で、そっち側についたのは田所君で2人目かな」
「…え、それって、俺以外にもう1人いるってこと?」
「確かではないんだけどね。1個上の先輩で『氷の女帝』の異名を持つ、新藤美琴(しんどう・みこと)先輩。この人もなびかなかったわ。」
「『氷の女帝』?ってどいうこと?」
「なんでそう呼ばれているか。私にはわからないわ。まあ、そんなことより、プレゼン。少なくとも、私だけの力じゃ無理だわ。」
「プレゼンなら、そここそ、俺に任せてよ。」
今度は俺が友坂に不敵な笑みを返してやった。
===To Be continuity===
超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第9話 アザトイ】
ーーー放課後ファミレスにてーーー
「で、感想。」
友坂はファミレスで席に着くなり、そう俺に言った。
「まあ、そんな慌てんなよ。何か頼む?」
「慌ててなんかないわ。飲み物だけでいい。」
「そ。じゃあドリンクバーにするかね。」
そう呟きながら、俺はテーブルの呼び出しボタンを押した。
「ドリンクバー2つで」
「かしこまりました。ドリンクバーはあちらにございます。」
店員に案内された場所でコーラを注ぎ、席につく。
「率直な感想で言うと、まぁ驚かされた。ストーリーはもちろんのこと、キャラクターがストーリーの背景ときちっと整合性が取れていて、違和感ないものだったし、何より既に教室でどんなことをやるか設計図、またそれを実現するための材料の案まで書き留めてるんだから驚いた。正直、高校生にしては大した企画力だと思った。」
「…高校生にしては?」
「あ、いや、こっちの話だから気にしないで。ただ…」
「ただ?」
「ただ、このコンセプトをクラスに説明して同意を取るのが難しい……なんせ、ここまで作り込まれているものを説明するのに、軽く見積もっても30分はかかりそう。これだと小野寺先生からもらった時間じゃ、とてもじゃないけど足りない。説明を端折ってしまえば、同意は得れない。端折ってでもクラスみんなが、それで行こうってなればいいんだけどなぁ…」
「それなら簡単よ」
「簡単か?」
「私がこのコンセプトを説明すればいいの」
「いや、どんなに友坂さんにプレゼン力があって時間内に上手く説明できたとしても、それで同意取れるかは別問題だろ。」
「あら?田所君知らないの?それとも忘れちゃったかしら?」
「なにが?」
「ふふふ…まあいいわ。とにかくクラスへの説明は任せて。」
友坂はそう不敵な笑みを浮かべながら言った。
俺はどこからそんな自信が湧いてくるのか、不思議に思いながらコーラを飲み干す。
ーーーある日の5時限目(数学)ーーー
「…以上で章末問題の解説を終わりにして、田所君にあとは任せます。」
「小野寺先生ありがとうございます。」
俺は教壇へと足を運び、またプリントを配る。内容は友坂のコンセプトを要約したものである。
「えーっと、今回はお化け屋敷を希望するにあたり、どんなお化け屋敷にするのか案が欲しいと僕の例をもって募集かけました。たくさん、いただいた案を今お配りしたプリントにまとめてみました。案を提供してくださった方に、どういう想いや意図でこの案にしたか聞いたうえで、みんなの合意を取ろうと思います。それでは友坂さんお願いします。」
俺が友坂の名を口にした途端、クラスがざわつき始めた。
「なんで、ゆきりんなんだ…」
「由紀子様が田所と協力してるなんて…」
そんな声にかかわらず、友坂は悠々と教壇に上る。
「みんな、今回プリントにあるコンセプトを提案したのは私です。どうかな、一生懸命考えたんだけど。みんなこのコンセプトでやってくれるかな?」
この前のファミレスで見せた姿とは打って変わり、友坂は健気に頑張る優等生を演じだした。というより、コンセプトの説明何一つしてない…
俺は頭を抱えてしまった…
「と、と、友坂さんが一生懸命考えてくれたやつなら、きっとうまくいくよ。やろう。」
「そうよ、由紀子様の考えたコンセプトなら、絶対面白いに決まってるわ。」
「このコンセプトよく読んでみたら、しっかり作りこまれてる。さすが友坂さんね。」
…嘘だろ、あんなプレゼンでクラスがまとまるなんて。
そうこうしているうちに友坂案のコンセプトで確定となった。
というより、予定していた時間を5分以上残して…
この女、恐るべし…
===To Be continuity===
超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第8話 やまとなでしこの裏の顔】
ーーーある日の登校時ーーー
「…あの田所君、ちょっと良い?」
髪の長い、いかにも真面目って感じの女子が声をかけてきた。それもそのはず、彼女はクラスメイトであり、保健委員を務める友坂由紀子(ともさか・ゆきこ)である。
彼女の持つやまとなでしこ的上品さに心奪われ、陰で「ゆきりん」と呼ぶクラスメイトもいる。
「友坂さん、どうしたんですか。」
「この前もらったプリント。」
「ああ、お化け屋敷のコンセプトのやつですか。」
「読ませてもらって、私も考えたんだけど。これどうかな。」
友坂はそう言い、一冊のノートを手渡した。
「これは…」
「私、昔から遊園地が大好きで、毎週家族と出かけてたの。そしたら、自分だったらこんな設定にするのに、こんなキャラクターいたらいいのにって、ずっと思ってたの。」
「…なるほど。それを具現化するチャンスが来たってことね。」
「そう!ぜひ感想聞かせてほしいな。」
「俺の感想いるのかな?あくまでも案として受け取っておくよ。」
「いや、それじゃダメなの。」
「え?それじゃダメってどういうことなの」
「あなたのプリントに書かれてたコンセプト案のすべてを読んだわ。そして驚かされた、代表者に選ばれてから、あんな短期間であの数の案。そしてそのどれもが、ストーリー、キャラクターがきちんと設定されていたわ。私がこのノートに書き溜めたようにね!」
「あーあれは、たまたまだよ。たまたま読んでた本を参考にしたまでよ。」
「たまたまですって、いやどちらにせよあなたのせいで、私の心に火が付いたの。あなたに認めてもらうコンセプトを考えたいって。だから、あなたの感想が必要なの!」
ものすごい剣幕で友坂が詰め寄る。
「わかった、わかったから、休み時間とかに確認するよ。じゃあ。」
あの友坂がここまで熱量持って接してくるとは…
あまりの勢いに押され、俺は根負けし、感想を述べると約束してしまった。
ーーー4時間目(化学)ーーー
…化学ねぇ…現役時代にゴロ合わせいっぱい覚えてしまったせいで、このレベルなら、まだ真剣に授業聞かなくても大体いけるな…
てか、退屈だな…
あ、そういえば友坂から借りたノートでも確認してみるか。昼休みまでに確認しとかないと怒られるだろうし………
ノートなら、サボってんのバレないだろうしな。
…!!
ーーー昼休みーーー
「友坂さん、これありがとう。」
俺はそう言い、友坂に借りたノートを返した。
「…うそ、田所のやつ、友坂さんと話してる。」
「え…ゆきりん様と??」
俺の一つ一つの行動にざわつくクラスメートを後目に、友坂は俺に向かって一言
「早速だけど、感想を聞かせて?」
「ああ…よかったよ。」
「どこが?どの辺が?キャラクター?設定??」
「…あぁ、全部良かったよ。あのしっかりディテールも凝ってて。」
「もっと細かく!具体的に!感想聞かせて?」
友坂が声を大きくし、俺に詰め寄る。
クラスメイトの視線も痛いし、何より友坂のこの熱量が怖い。
一旦、場所を移そう、ちゃんと整理して話すからと俺は友坂に、
放課後に近くのファミレスで話をするよう持ち掛けた。
「わかったわ。適当な感想なんて述べたら、ぶっ飛ばすから。」
普段の友坂から想像できない言葉が飛んできた。
…さぁって、なんて説明しようかね…
===To Be continuity===
超合理的高校生の3年間 -社会の歯車が高校生に転生!?-
【第7話 用意周到】
「小野寺先生、今お時間大丈夫ですか。」
「はい、大丈夫ですよ。田所君。」
「文化祭の出し物についてなんですけど、企画書作成しないといけなくて、『コンセプト』をどうしようかなって。これクラスで意見出し合いたいんですけど、お時間とかってどこかで取れたりしますかね。」
と俺は小野寺先生に何とか時間作ってもらえないか打診した。
「田所君、私の数学の時間を少し使うことができなくもないが、そこで決めきるのは難しいと思いますよ。」
「ちなみに何分程度、いただけますか。」
「そうですね、多く見積もって15分ってとこですかね。少なくとも30分は数学の授業はしないとね。他のクラスと比べて特別進んでるってわけでもないですからね。」
「わかりました。15分で十分です。その15分頂戴してもいいですか。」
「え、ああ…15分でいいなら…いいですけど。」
「ありがとうございます。」
そういうと俺は職員室を後にした。
ーーー数日後の帰りのHRーーー
「すいません、あのちょっといいですか。」
そう俺はクラスに向け、声を挙げた。
クラスメイトがこちらを向く。
俺はクラスメイト全員分のプリントを持ち、その場に立った。
「えっと、今度の文化祭でお化け屋敷を希望として挙げてますが、どんなお化け屋敷にしたいかっていうコンセプトを考えないといけないということで、今日ここに僕の方で何個か案持ってきたのを印刷しました。申し訳ないけど、プリント配ってもらえるかな…」
そう俺は持っていたプリントを隣の岡崎に渡した。
岡崎はクラスの全員にプリントを配った。受けとったクラスメイトはややざわつきながらも俺の作成したプリントに目を通していた。
「まあ、あくまでもコンセプトの一案です。必ずしもこの中から選んで下さいというわけではなく、こんな感じの良いっていうアドバイスとかあったら、全然案として提供してもらえると助かります。で、コンセプトの確定は今日やりません。後日、小野寺先生の授業の時に時間を取ってくれるみたいなので、その時に確定したいと思います。よろしくお願いいたします。」
と俺はクラスに頭を下げた。
「…田所が頭下げたとこ初めて見た。」
クラスの一人がそうつぶやいた。
…え?正光、どういう性格してた??
ーーー放課後ーーー
通学かばんを背負おうとしたとき、後ろから
「やるじゃん、ミッツ」
岡崎がどこで付けたかわからないあだ名で俺を誉めた。
「岡崎さん、ありがと。ごめんね、急にプリント配布手伝わせて。」
「いいってことよ、それよりミッツ。あんた髪型だけじゃなくて雰囲気もホントに変わったよね。」
「そうなのかな…いかんせん、前の僕がどういう感じの人間だったかも覚えてないからな…」
「でもなんか、今のミッツいい感じ!」
「てかさ、『ミッツ』ってなに?どこからそうなった?」
「正光の『みつ』からとってみた。かわいくない?」
そう岡崎が顔をのぞかせながら聞いてきた。
「まあ確かに、言われてみれば…」
徐々にではあるが、このクラスにもなじめてきた気がする。
そんな風に思えたまだ暑さの厳しい9月だった。
===To Be continuity===